2022年6月14日 愛知県岡崎市にある「介護老人保健施設さくらの里」にて職員向け「クルマの運転通信教育」を行ってきました。
多くの介護施設では職員の運転ミスによっての事故が多く、車両修繕費と多額の割増損害保険料が悩みの種となっております。
事故が減らないのは当たり前
多くの介護施設では職員の事故を減らすために、安全運転講習として地元の警察などに依頼をして講習会を行っておりますが、事故は全く減っていません。
事故が減らない理由はとても簡単です。
安全運転講習を受けても事故を減らす具体的な取り組みではないからです。
事故を減らしたい!と言っているのに、事故とは何かを知らない介護施設の管理者は非常に多いのです。
事故とは車を何かに接触させること
壁に接触させて車を凹ませたら自損事故
相手の車に接触させて凹ませたら物損事故
人に接触させたら人身事故
安全運転講習のお決まりといえば、速度を出すな! ヒヤリハットなど机上の空論ばかりで事故が減るはずがありません。
車を接触させなければ事故にはならないのに、接触させない取り組みをしていないから事故が減らないのです。
事故が少ない介護施設は決まっている
今回、講習会を行ったのは「介護老人保健施設さくらの里」ですが、愛知県岡崎市で宇野病院を経営されている医療法人鉄友会さんの介護部門なのですが、講習会の話が持ち上がった時に、理事長さんから、うちの施設は事故が少ない。
と断言されたそうで、確かに施設に何台もの車両が止めてありましたが、バンパーにキズすらない綺麗な車ばかりでした。
やはり経営者の考え方が全てと云われておりますが、凹んだ車やキズがある車で施設利用者を送迎したら、大切な命を預かっているのに、この施設本当に大丈夫か?
誰もがこのように思うから
当施設では少しでも車にキズがあったら修理する!
通常なら費用が掛かるから…。
と収益だけで判断するところを、敢えて利用者の不安を払拭するという経営判断
これこそ、当施設では事故が少ない!と断言されることに繋がっていると思いました。
宅急便を作ったヤマト運輸の故 小倉昌男氏
大和運輸(現ヤマト運輸)は三越百貨店 専属の運送会社から誰でも知っているクロネコヤマトの「宅急便」です。
故 小倉昌男氏が「宅急便」を立ち上げたのですが、著書「小倉昌男 経営学」ベストセラー
で書いていることで参考になることがあります。
誰もが羨む三越専属の配送を請け負っていたのに、自ら取引を打ち切り「宅急便」をスタート。
東京23区に限った個人配送に業態を切り替え、初日の取扱個数が確か20個程度
完全に赤字の状態でも、お客様から荷物を預かり、お客様に配送するのは全て自社の社員。
他の運送会社では配送するは外注ばかり。
一番コストが掛かる仕事を自社の社員を使い、サービスを徹底する。
そして、凄いのは安全第一という言葉
多くの会社では「安全第一」と言いながら実は「利益第一」・「お客様第一」とすべて机上の空論ばかりで何でも「第一主義」
安全運転講習でおなじみの「ヒヤリハット」(笑)
だから何をしても結果が出ない。
事故は多い、利益も出ない、顧客から信頼されない。
ヤマト運輸では、「安全第一」「利益第二」と明確に優先順位が決められており、「安全第一」を遂行していたら不思議と利益までもが向上したそうです。
このようなトップだから現在でも「宅急便」輸送では荷物の破損率が他社と比較して桁違いに少なく、安全・確実・正確な時間で配送されているのです。
※私の知人が運送会社調査部門で衝撃センサー・温度記録計など様々な計器を入れた箱を地域別に輸送し、どの運送会社が安全・確実なのかを調査し、運送会社ごとに送る商品を変えていました。
東京ディズニーランド
多くの遊園地が経営難で閉鎖する中、1983年開園の東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドでは、開園40年を目前としても成長を続けている唯一無二にレジャー施設ですが、2011年3月11日の東日本大震災で有名になった出来事があります。
アルバイトのスタッフ教育では、ヤマト運輸の小倉昌男氏と同様に、お客様の安全には何を使ってもいい!
口先だけでなく、優先順位が明確に教育されていたことから、大震災が発生した時にアルバイトスタッフが売り物の「ぬいぐるみ」をお客様に渡し、これで落下物から頭を守って避難してください!
と渡したことがSNSで拡散し、それを見た人が感動まで生み、マスコミにも大々的に取り上げられました。
震災が発生したら「ぬいぐるみ」を渡しなさい!
ではなく、お客様の安全のためには「何を使ってもいい」
ここには損得勘定でななく、この本質が衰退するレジャー施設の中で成長し続ける要因だと思いました。
綺麗な車であれば誰が車を接触させたのか明確になる
放置された自転車の籠には必ず空き缶やゴミが入っているのをご存じですか?
そうなんです。
人間の心理として、ゴミが入っているところに無意識にゴミを入れてしまう。
凹んでキズだらけの車だと職員は車を凹ませたり接触させたりしても罪の意識すらない。
よく施設の担当者から、うちでは車を何度も接触させるから修理をしない!
と断言される方がいますが、実はその考え方こそが職員に対して車は凹んでいるからどうぞ事故してください!という無言のメッセージなのです。
本題の講習会です
さて、前置きが長くなってしまいましたが2008年から行っている「クルマの運転通信教育」です。
安全運転講習とは違います、全く違います。
何が違うか?
速度は出す時にはシッカリと出す! 止めるところはシッカリと止める。
車を使わず、座学だけで車を接触させない運転技術講習なのです。
この講習会でのお決まりがコチラになります。
次の写真を見ていただき、あなたは接触させない自信があるか?自信がないか?
についてです。
プロジェクターにこの写真を映し出します
拡大写真がコチラになります。
車体との隙間 約10㎝
講習会前後にこの写真でアンケート
プロジェクターにこのような写真を映し出し
1.絶対に接触させない自信がある
2.たぶん接触させない自信がある
3.接触させない自信がない
4.絶対に無理
この4つについての質問をスマートフォンを使ってQRコードを読み取り、完全無記名方式のアンケートを行います。
講習会では車を一切使いません。
写真のようにプロジェクターに映し出された動画を見ているだけです。
過去の事故事例など一切ありません。
放映したのは、第一部(約40分間)講習会映像で運転免許取得後6ケ月のペーパードライバーが自動車教習所で教わった運転方法で運転をしてもらい、次に車の外から「車の原理原則」について説明を受けているシーンです。
「車の原理原則」とは、大型トラックでもワンボックスカーでも軽自動車でも、車は全て簡単な法則に基づいて動いているという解説だけです。
自動車教習所で教わった運転方法で運転すると幅寄せでは脱輪し、車庫入れでは障害物に車を接触せていたのに、30分後には同乗指導や運転練習しなくても運転ができるようになった場面です。
多くの人が運転練習したら運転が上手くなると思い込んでいますが、実は運転免許を取得した運転技術があれば誰でも車を接触させずに運転することは可能なのです。
そして第二部(約40分間)では運転が上手くできない原因を知っていただき、人間の視野は狭い説明後に、どの順番でどの場所を見るのか?という理論
そして交差点での事故防止や、左折時の巻き込み事故と煽り運転をされない方法についての解説でした。
やはりココは凄い!
私は多くの介護施設で運転指導(動画放映だけ)してきましたが、驚きました。
お昼ご飯を食べた後の眠たい時間なのに、誰も指示していないのに、動画を閲覧しながら何人もの職員が裏紙などにメモしながら真剣に観ている。
やはり事故が少ない!と断言する施設でのトップの考え方が末端まで行き届いていました。
本来なら無記名アンケートのデータが…
前半と後半の動画40分 合計80分の動画を観ていただいた後にアンケートをしたのですが、私の完全なミスにより集計ができていませんでした。
そこで挙手でアンケートとりましたが、受講前に接触させない自信が無かった人に手を挙げていただくと7名ほどいらっしゃいましたが、受講後は全員が自信あるとして誰一人手を挙げる人はいませんでした。
車の運転は練習したら運転が上手くなると思っている人がいますが、それは感覚運転をしているから練習しないと運転が上手くならないのです。
車は機械なので必ず正確に動く
車の原理原則を知る車を接触させなくなるのです。
遠方からお越しくださり、ありがとうございました。
残念ながら社名の公表はできませんが、誰もが知る大手企業の担当者が東京から愛知県岡崎市まで起こし下さりました。
本当にありがとうございました。
この講演は、大手損害保険会社の社外取締役などをされてる方のご厚意によって開催させていただきました。
介護老人保健施設さくらの里 スタッフの方々、そしてご参加くださいました方々に心より感謝申し上げます。